老人介護のエピソード
(9)救急車で一命を取りとめる
ウンチ騒動から暫く経過したある日、夜明けの3時過ぎ頃だったと思う。また緊急通報装置が鳴る。
ピーンポンパンピーン。私設無資格救急隊員が駆け付け、僅か5秒で現着!!
本人の訴えでは「吐きがする、目もくらくら、頭もふらつく感じが・・・」という。
私は てっきり再び脳梗塞か?とも疑った。医師資格もない私設救急隊員には判断できなかった。一般には脳梗塞という病気は、再発はあまりない。次に再発らしきものがあった時は、その時は概ねご臨終のケースが多いことは知っている。
急いで119番通報、着替えさせて、いつもの病院にも連絡、保険証を準備した。この間約5分。救急隊の到着より早い。着替えは常に夏季入院用、冬季入院用と2種類用意してあり、私がいない時であっても、誰にでもひと口で判るように、衣装ケースにラベルを貼って押入れの判りやすい場所に準備してある。
保険証を用意するのは、咄嗟の場合、救急隊員に見せるだけで、ごちゃごちゃ質問を受けることなしに事故状況、病状のみ説明すればいい。救急隊も生年月日、氏名やその文字の解釈・確認などしなくても、それを見ながら本部と連絡が取れるから間違いも少なく便利である。
救急センターには、近くの通りまで迎えに出て手を振るのでサイレンを止めるように言っておいた。なにせ真夜中だから、ご近所に迷惑をかけるからだ。それでも「サイレンを鳴らさないと緊急車として走れません!」と言われてしまった。実家から約50m余り、小さな小路は普通車は走れても救急車は入れない。救急車があまりに遅い(と感ずる)ので、親父を車椅子に乗せて玄関を出て家の前の通りに出ようとしていた矢先に到着。
到着まで6分だった。直ぐにストレッチャー(救急担架の一種)に載せ替え救急車は走り出した。救急隊員に病院には連絡済みである旨を伝え、私は後で車で追うことにした。こんな時にも保険証を渡しておけば、ついて行かなくてもいいわけである。(救急隊を要請した理由のみ説明しておけば、隊員が病院で家族の代弁<返>をしてくれる。)
数分後、親父の支度と同時に自分も着替えていたので免許証と財布だけ持って病院へ。実家からは約15分のところにある通いつけの大病院。守衛に名前だけ言えば処置室を教えてくれた。良い病院はこんなところが訓練されているものだ。既に診断が始まっておりX-ray写真撮影中であった。医師から呼ばれて写真を見せられて唖然とした。
なんと、小腸から延々とぎっしりウンチが詰まっている。(続けて汚い話で申し訳ありません。汗;;) 原因は腸閉塞である。
たまたま当直医がこの病院の腕のいい外科医の副院長であった。ラッキー!と喜んでおれる状況ではないが。師曰く、「通常このレベルであれば、殆どのお年寄りは亡くなっているんですがねぇ……」と。即入院が決定。
「もう少し到着が遅れたら、駄目でしたネ。」とまでつけ加えた。「九死に一生」とはこのことかも…、そう思えた。正にラッキー!である。
先ずは一命を取りとめ、ひと安心した。救急隊の皆様ありがとうございました。大感謝。この時初めて外科医がお腹を触診して判断する技術の素晴らしさを学んだ。
この頃、親父は1人でトイレに行っていた。そして私はその都度毎日の便通の確認もしていた。3日も出ない時には市販の薬を飲ませていた。もちろん、病院の薬の処方状況を薬剤師に説明をして購入している。ところが、親父が私に虚実報告をしていたのだ。病院の話では、4日や5日ではこの状態にはならないという話であった。以来親父は正直に報告するようにはなったのだが……。
その後も事件は起こった。糸通し3万円騒動の話もある。