老人介護のエピソード
(23) 食後に動けない・・・
広辞苑が愛読書の親父の行動パターンも少しづつ変化が見られる。長年あらゆる部分で細かく観察しているのでよく判る。何せ年齢的には確かに定年を過ぎてはいたが、会社が辞めないで欲しいというのを介護のために無理やり辞めたのだから、しっかり介護をしないと意味がない。
非常勤で勤めていた会社は手当を2倍出すと言ってくれているのに、逆に介護最優先という条件付きである代わりに自分で1/3にしたのだから、感謝こそ大いにされたが、無理な引き留めはなく円満に退職できた。
今になって思えば、約半年後には入院の運命にあった父だが、毎日午前・午後の2回の読書の時間が半減した。それにノートにびっしり漢字を忘れないようにと書き取り練習をしていたが、こちらもやめてしまった。
さらにいつも楽しみに見ていた「水戸黄門」も、「あと何分で始まるよ」と時間のインフォメーションをしたり、時にはテレビの電源を入れてやったりもしたが、見たり見なかったり。原因はどうも視力の衰え(緑内障の悪化かも知れない)らしい。目薬は毎日に2種類(延べ8回)さしてはいるが、医者からはどうしようもないと言われ、眼鏡屋さんからも調整の限界と言われて自分でも観念した形である。歩行器を使いながらも自力で歩いてトイレに行ったり、食堂に移動するのは絶対に寝たきりにさせないという私の執念であると同時に、本人の自分で歩くという強い意志によるものであり、これは今までと変わらない。
実はその自らの力で歩こうとする意志は、本人がボケていないがゆえに、(自分で言うのも恥ずかしいが)献身的な涙ぐましい介護に対し、何とか迷惑を掛けないようにと努力している結果だと思われる。
薬は脳梗塞関連では有名なバイアスピリンの最少単位(朝・夕)と血管拡張効果のあるビタミンEに限りなく近い薬を朝食時、糖尿病はアマリールの最少単位の0.5mgを飲んでいたが、血液検査結果からほぼ完治に近い状態なので私から主治医に提言してやめることにした。ただ、先日の入浴時の蒟蒻事件から判断して、どうも脈拍や血圧に異常が見られる傾向がある。高血圧はこれまでにもそれほど問題になったことはない。介護や医療の専門職の方はよくご存じだが、高血圧にもいろいろ種類があり、一般的な高血圧以外に、仮面高血圧、白衣高血圧、夜間高血圧など嘘みたいな名前がつけれれているが、れっきとした医学的に使われているものである。親父の場合はどれにも該当しない。血圧測定と同時に脈拍も測ることが多いが特に問題も出ていない。しかし、個人では心電図が簡単に測れないので、不整脈など詳しい診断はできない。(それに医者程の知識も無いし…)
食事の際に時々半分居眠りしているかと思えるほど、体を傾けながら食べることがある。だが、も手や口の動きが止まることは全くなく、食への意欲はある。そんな食事の仕方だから、犬猫が食事した後よりも汚い。
それでも私はいろんな工夫をしているので、汁が床にこぼれたり、食器が滑って片手で食べられないなどの不自由さはないようにしてある。そんなある日、食事が終わった後で本人はテーブルを押さえながら立って、歩行器を掴もうとするが心なしかふらつき、「動けない」(立てない)と訴えることが入院するまでに5~6回くらいあった。
仕方なく車いすを座敷に上げてベッドまで運んだことがある。車輪径30インチ(1inch=25.4mm)程度でハンドルも折りたため、女性でも片手で楽に運べる特殊なタイプなのでこんな時は便利である。食事に時間をかけて食べると早食いをしたときに比べて、血糖値が高くなることが医学的に正しいことは皆様もご存じであろう。また、血糖値が高くなると同時に食事をすると体温の変化(上昇)もある。血糖値や血流・血圧を一定に保とうとするヒトの体の自然の調節機能(ホメオシタス)を司る脳が、複雑かつ微妙なバランスコントロールのためにフル活動して一時的な異常をきたしていると考えられる。
脈が止まりそうになるんです・・・