老人介護のエピソード
(19) ウヌ? 何か燃える臭いが・・・
自分の書斎を私に譲ったので、先に書いたミシン室が親父の書斎のようなものである。頻尿の問題があってもここなら1分もかからずにトイレに駆け込める。歩いている途中にうっかり失禁することもない。それに、ここにはトイレ内も含めて10か所近くの手摺が介護保険を使わず自費で設けてあり、歩行器や杖も必要でない。冬などは玄関側のドアを一つ閉めれば温室のように暖かく、首振りの電気ヒーター一つで真夏のようになる。(私にとっては暑いが、本人は「ちょうど良い暖かさ」と言っている。)天候が悪い時は、ここでボケ防止の勉強(?)はしないが、原則1日に2回は日課の広辞苑めくりをしている。ノートに必死に書いているが果たして頭に入っているのか、忘れそうな漢字がリマインドされているのかは、別にテストをしているわけではないので不明である。
ある日のこと、その親父の居るところから20m近く離れた私の居室で、ブログを書いている時だったか、勉強をしているときだったかも知れない。それはどうでもいいこと、気のせいか紙の燃える臭いがする。自分としては全く心当たりのないものであり、外から臭ってくるのも不自然な気がする。親父の寝室の灰皿は取り上げて喫煙禁止にしたし、それにタバコの臭いとは明らかに異なる。気になるので親父のベッドのある居室に行くと、エアコンはガンガンかけたまた障子は開けっ放しで姿がない。もったいない電気の無駄遣いをして・・・と思いつつ、例のミシン室の方を見るとガラスに親父のいる様子がうかがえた。
まさか、と思ったが折角ここまで来たのだからと、「お父さん、何か臭いがしない?」と覗いてみた。本人は何のことか全く理解していないようで、怪訝(けげん)な顔をしている。よく見ると、ミシンの上に置いた灰皿のタバコの吸いかけが傍のゴミ箱の中に落ち、燃え上がったところである。
本人は辞書を読むのに熱中して、吸いかけのタバコは忘れて新しいタバコをくわえている。「お父さん、ここが燃えているよ!」「おお、誠のう、こりゃ~気づかんじゃった」と呑気なもの、驚きもしない。幸い洗面所の前なので洗面器に溜まっていた水を直ぐにかけ大事には至らなかった。
翌日またしても火災報知器を買って来て、床面から1.2mの高さに取り付けた。台所、トイレ内についで3つ目の火災報知器になる。「備えあれば憂いなし」とは言うが、火災報知器3か所、緊急警報(呼び出し)装置の発信器は、ベッド脇、居室出口、トイレの3か所、加えて廊下に2か所緊急警報ベルが用意してある家も少ないことだろう。すべて自費で用意したものである。
灰皿もかなり大きな重たい深いガラス製のものが用意してある。100円ライターが指の力がなくて火がつけられず、マッチを使ってタバコに火をつけるので小さな灰皿では危ないことこの上ない。おまけに鼻をよくかむので至るところにティッシュペーパーがおいてある。それを灰皿やゴミ箱に捨てた後に、マッチの擦りカスやタバコの吸い殻を捨てるからとても危険である。ゆっくり買い物にも出かけられない。灰皿が燃え上がることは健常者でもよくあるが、運よく私が気が付いて大事に至ることはなかった。それにその事件以降は火災報知器がも取り付けたし、私の外出時以外は先ず安心である。
ええ? 昨日、交換したばかりなのに・・・