老人介護のエピソード

 

(17) さすがに病院、しっかり消毒もしておきましたよ!

 親父は出歩くことは、若い時から好きではなかったようである。お袋が旅行に連れて行ってくれないと、私が学生時代によくボヤいていた。独りで行けばいいようなものだが、お袋は目が片方不自由でやはり誰かが一緒の方が安心できるのである。だから私が若い頃(東京に転職する前)は、親孝行の真似ごととして両親をあちこち旅行に連れって行っていた。その位だから年を重ねるとよりさらに出不精になり、お袋の介護が終わってからは、殆ど病院以外には1年に数回程度しか出かけたことがない。外出は、平均すると最低月2回は通院の介護が必要になった。

 脳梗塞で倒れてから神経内科は毎月受診し、薬も外部薬局で購入して帰るのが常である。病院の方でもいろいろ配慮してくれて、コンピュータで次の予約を入力する際に他の歯科や眼科など受診がある場合は、できるだけ日時を合わせるように調整してもらえた。最近の大病院はサービスも行き届いている。
病院の玄関先にはバス停留所、タクシーなどの乗用車、身体障害者乗降用、緊急(救急)車両用にそれぞれ区分されている。急患の場合は搬入口も玄関とは別に用意されている。病院に着くと車のトランクから小型の特殊な車椅子を取り出し、親父を移送して訪問客の邪魔にならない部分に車椅子ごと待たせておいて、車を駐車場(1時間以内は無料、過ぎると100円)に移動し、診察券の自動受付をして保険証の担当者に確認のサインをもらい、目的の診療科に勝手に行きそこの待合椅子で待つ。

 頻尿の傾向がある親父だが病院に行った時は、車椅子に座ったまま、いつもよりかなり我慢強く辛抱しているようだ。いろんな診療科に行く場合も私がついて行かないと、車椅子の取扱いにも慣れていない看護士も多く、病院の一般車椅子に乗せ換えるのも面倒なので自分のものに乗ったまま待機している。歯科の受診に行っても、看護士は介護士と違って車椅子から治療用椅子に乗せ換える方法を知らない(習ったのに忘れているかも知れない)人も多いし、車椅子のブレーキのかけ方、ハンドルや座椅子の折りたたみ方も知らないらしく焦っていることがある。

たまに予約時間に行ったのに1時間位待たされることがあり、仕方なく院内のトイレを利用することがある。そんな時に限って、ハプニング(事件)は起こるものである。

親父を車椅子用のトイレに搬入し、「利用中」の札を裏返して待つことしばし。もう終わった頃だろうと中に入ると、下半身は私が出してやったままで、「オシッコはしたがくしゃみの弾みに入れ歯が便器の中に落ちて、ウンチができない!とのこと。 

 困った私は通りすがりの看護士に事情を説明すると、「ハイ、判りました。少々お待ちください」と、ものの1分もかからないうちに火ばさみと入れ物を持って帰って来られた。どうやら、所定の場所に所定のものが用意されているようで、恐らくこのようなケースは、予め想定された範囲内のものであるらしい。診療科を尋ねられて待合室でまっていると、そこは病院、手慣れたもの「しっかり消毒もしておきましたよ!」だって。
本当にお忙しいところお世話になりました。実は、これと同じことは自宅でもある。どちらも排便中に落ちたことはなかったが、もし排便中の場合は少々手間がかかるのではないかと、余分な推量をしてしまうのは貧乏人根性かも?。


親父のボケないための愛読書

 

[Back]    [Next