1.料理の味付け

 以前にも書いたが主婦なら誰でも知っておられるであろう「料理のさしすせそ」も知らない方に料理も説いても始らない。先ずはそれが基本である。よく言われることに「料理は愛情が一番!」というが、もちろんそれも大事なことではあるが、それよりも「料理は理論」なのである。何事も理論・理屈を知ることは、自分の知識に自信を持って行動できる。一般に調理の際に加える調味料の順番、つまり、味の付け方の基本では下記のように言われる。

 

①砂糖(とう)、②塩(お)、③酢()、④醤油(うゆ、昔の人はこのように書いた、正しい字音は「しょうゆ」、⑤味噌(み)又はース

 

これらには、それなりの理由がある。例えば、砂糖は親水性が高く、塩は浸透圧が高い。塩を先に入れてしまうと漬物でお分かりのように食品中の水分を追い出してしまい、塩の味が強くなり後からの味が浸み込まない。だから、砂糖や味醂は一番初めに使う。酢は早く入れると「酸味」が飛んでしまい「味」がしまらない。味噌のような発酵食品やソースは香りを楽しむ調味料であるから、最後に入れないと効果が薄れる。味噌汁をつくる時、火を止めてから又は止める直前に味噌を溶いたり、胡椒やトウガラシ、その他香辛料は一番最後に入れるのがその理屈である。

「料理の味が薄い、濃い」というのは、塩気(け)で決まる。塩を使わない料理は酸味や甘みを強くして食べるものが多い。甘いお汁粉、ぜんざい、夏ならスイカを食べるときに塩を少し使うのは、甘さと対比して味を引き立てる効果があることによる。逆に魚の煮付けの際に醤油に砂糖や味醂を加えるのは、味に優しさ、すなわち「まろやかさ」を出すことにある。味醂の場合は、さらに料理に艶を出す効果もある。

しかし、これだけを「何とかの一つ覚え」でも良くない。味噌の種類でも「八丁味噌」の類は煮込むものに使われることが多く、最後に使ったのでは意味がない。この理論から「出汁入り味噌」なんて言うものは邪道である。先に入れると味噌の変りが飛ぶし、後で入れると具に味がつかない。でも、具の種類によっては、手軽でいい場合もある。

「さしすせそ」を基本としながらも、料理によって使う順番も変わってくるので経験で覚えるしかない。

 蒟蒻など味がうまく浸み込まない料理も多い。もちろん、空炒りして使えば簡単に味がつく。何でも空炒りできる材料ばかりでもない。だが、ご存知のように味を十分に浸み込ませるには加熱・味付けが終った後、一旦冷ましてから再加熱するのがコツである。繰り返せば繰り返すほど味が良く沁(浸)みる。

次回は、もう少し味付け前のお話に。