滅菌・殺菌・消毒・除菌・抗菌の違い
最近、やたらと抗菌処理などという高額なインチキ商品が出回っている。中には効果が殆どないか全くないという理由で消費者庁から処分を受けた業者も多い。(以下はその例)
【アシスト】 空間除菌ブロッカーCL-M50
【ERAJapan】 ERA空気除菌グッズ
【エイビイエス】 ハイパー・ブロック
【大木製薬】 ウィルオフバリア、ウィルオフポケット、
ウィルオフスタンド
【紀陽除虫菊】 携帯用エアドクター台紙セット、
空間除菌Air Doctor 150g
【クオレプランニング】 ウィルスブロッカーノヴァ
【阪本漢法製薬】 ウィクリアGEL
【ザッピィ】 スペースウォッシャー
【CKKインターナショナル】 ハイパー・バリア
【新光】 ES-010エコムエアマスク、
ES-020エコムエアマスク
【大幸薬品】 クレベリンゲル、
クレベリンマイスティック
【中京医薬品】 クイックシールドエアーマスク、
クイックシールド置き型
【ティエムシィ】 ウイルスガード 、ウイルスガード・ゲル
【東京企画販売】 ウィルキルG
【ヒュー・メックス】 エアースクリーン、ウイルハント
【プライス】 ウイルバッシュホルダー
【レッドハート】 パルエックスG
これらには有名メーカーも含まれるからメーカー名だけでは信用できない。
消費者庁に移される前の公正取引員会が出した排除命令(平成21年度分の
データだが…)だってご覧の有様で有名な会社がずらり。
さて、本論に戻ろう。一般の方のイメージもかなり怪しい。多くの方は、「消毒」に良いイメージを持っているのが現実である。日本石鹸洗剤工業会の調査によると、下図のように消費者に厳密な意味はあまり理解されていない。滅菌も殺菌も同じ感覚で下位のものを以外に過大評価している傾向がみられる。
highdy に言わせれば、法整備や規制がまだ業界に追いついていない状況である。
正しい知識を持つために少しだけ勉強をしてみよう。特に乳幼児や小学生を持つ親には大切で、病院で教えてくれる正しい手洗い法など適切な教育をしよう。
実際に安全性のレベルから順位をつけると、
滅菌 > 殺菌 > 消毒 > 除菌 > 抗菌 のようになる。
では、もう少し具体的に解説みよう。
滅 菌
病原性の有無に拘わらず、有害・無害を問わず、対象物に存在しているすべての微生物およびウイルスを死滅させるか、又は除去する作用又は行為をいう。
日本薬局方(やっきょくほう)では微生物の生存する確率が 100万分の1以下になることをもって、滅菌と定義している。
「滅菌」と言えば、言葉の上では菌に対しては最も厳しい対応ということになる。すなわち、すべての菌(微生物やウイルスなど)を、死滅させ除去することである。
しかし、現実的には人体ではあり得ない状況(例えば、ヒトの手を滅菌するには、人体の細胞ごと殺さなければならない)を意味し、病院などの業務用器具などの菌に対する用語だと考えてよい。
実際に「滅菌」は、いろんな現場では、微生物を特に限定せずその量を減少させる、という意味で、「消毒」と同義のように器具・用具などについて使われている。従い、一般家庭においては縁のないものとも言えるかも知れない。
殺 菌
正に文字通り菌を殺すことで、病原性や有害性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を死滅させるさせるか、又は生存が不可能な状態にする作用及び行為のことである。
しかし、これ等の微生物を死滅・殺菌とは一部の微生物や菌だけを殺菌しても殺菌したことになる。極論をすれば、ある種の菌のみ、また全体の1割の菌を殺して9割が残っている状態でも「殺菌した」と言える。すなわち、この用語には対象やその程度が厳密に示されていない。
よって「殺菌 = 安全」ということにはならない。
「殺菌」という表現は、薬事法の対象となる消毒薬などの「医薬品」や、薬用石けんなどの「医薬部外品」で使うことはできるが、「雑貨品」に分類される洗剤や漂白剤などでは使用できないことになっている。
消 毒
薬事法上の用語で、物体や生体に付着又は含まれている病原性微生物を、人体に有害な細菌等の微生物を無害化すること、又は殺すことなく能力を減退させる作用または行為。
「消毒する」とは無害にするまでの行為をいう。すなわち、害のない程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせるなどして、毒性を無力化させることを意味する。
一般に「消毒殺菌」という慣用語が使われることが多く、消毒の手段として殺菌が行なわれることもある。但し、病原性をなくする方法としては殺菌以外にもあるので、滅菌とも殺菌とも違うという意味での使い分けもされている。
その手段としては、消毒薬のアルコールを中心に各種薬剤が無数にあるがそれ以外にも、熱湯消毒など原始的な方法なる沢山ある。
除 菌
学術的な専門用語としてはあまり使われていない言葉であるが、対象物から増殖可能な菌を有効数除いて減少させることである。菌を殺したり減少させるのではなく、「菌の増殖を抑制、あるいは阻害する」という意味である。
さらに言い換えれば、物体や液体といった対象物や、限られた空間に含まれる微生物の数を減らし、清浄度を高めることを意味する。
手から微生物などを石鹸などで洗い流したりして、物理的に排除することで、必ずしも微生物を殺すとは限らないし、殺すこともある。菌を取り除くためには洗浄やろ過が一般的な手段であるが、その程度(範囲)も様々で、除菌したから安全とも言えないことがある。
洗剤や漂白剤など「雑貨品」の表示にも使える言葉である。台所洗剤などに、「除菌」という表現がしばしば見られるが、実は薬事法の規定があるために、殺菌・消毒などの効果があっても「殺菌」や「消毒」の用語が使えない。
法律上では食品衛生法の省令で「ろ過等により、原水等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を除去することをいう」と規定されている。
この性能を訴求する商品も沢山あるが、その用語を使用する業界でそれぞれ勝手に基準(範囲)を決めている。例えば、洗剤・石けん公正取引協議会が定義する「除菌」は、「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を、有効数減少させること」としており、この細菌にはカビや酵母などの真菌類は含まれていない。だから、「除菌したのにカビが生えた!」ということもあり得る。
抗 菌
「除菌}同様に対象や範囲が秘奥にあいまいで、定義の範囲が広く文字のイメージから消費者にとって漠然とした意味を持っていて紛らわしい。(細)菌の増殖を阻止あるいは阻害することである。繁殖を阻止する対象や程度を含まない概念。
経済産業省の定義では、対象を細菌のみとしている。従い、JIS規格の抗菌仕様製品では、かび、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされている。
有害な細菌等の微生物を無害化するか又は減退させる「殺菌」と「除菌」の中間的というのが正しいが、一般的には上述のように範囲があいまい且つ積極的な行為を伴わないことから、安全性レベルは最下位と考えた方がいいだろう。
抗菌加工品は、台所・風呂・トイレなど水回り用品や靴下などの繊維製品、衣類の柔軟仕上げ剤などにも抗菌成分が配合されることがある。
さて、多少はイメージがご理解いただけたろうか。
オゾン、紫外線照射は「殺菌」、水道水に塩素を加えるのは、「滅菌」や「殺菌」は間違いで正しくは「消毒」という。でも、看護師が注射の前にアルコールの脱脂綿で拭くのは「消毒」で、食卓にアルコールを吹き付けるのは「除菌」(台所用品では「消毒」は使えないため)、流し台の隅に置く銅製のゴミ集めや銀メッキの取っ手などのように銅イオンや銀イオンを利用するのものは「抗菌」という。
ヒトの口に直接入るものをつくるには、それなりの知識が必要で、highdy が設計していた医薬品・食品加工工場はGMP基準、バリデーション、HCCPなどの高度の管理技術が使われており、上記のような知識は序の口である。加えてあらゆる専門技術者が関与するが、彼等もその知識が十分でないと正しい仕事ができない。そこまでやっていても、人間することだから事故が起こることがある。一旦大事故を落とすと、その会社の命とりになるから気が抜けない。これと highdy の頭の後光は関係がないが・・・。
[参考資料]
食品衛生法等に定められている食品の細菌学的成分規格一覧表
(一部抜粋)
生食の場合、一般生菌数は10万個/g以下と覚えておくとよい。さらに、指定種類の有害菌がないこと、又は指定数量以下でなければならない。
なお、上記のリンクで、PDFファイルのダウンロードも可能になっている。