第3回 水と健康とダイエット

水を選んで使い分ける

 

 健康であるためには、水に関する知識も大切である。水について少し考えてみることにする。

軟水硬水というのは、ご存知の方も多いだろう。ここでいうのは水の硬度のことで、「工水」のことではない。一般にいう工水は工業用水の略で飲用水には使えない。ひと口に硬水=ミネラル水とも言えるが、実はランクがあり、体にとっての良し悪しは一概に言えない。国民性と個人の体質によるところが大きい。

 日本や英国は島国で地形的に水の滞留年数が短く、比較的低硬度の自然水が多い。また、日本の水道水は殆どが軟水である。ヨーロッパなどは高硬度の水が多く、日本を除く多くの国は硬水である。日本人は硬水に弱く、外国に行くと「水アタリ」(=下痢)をする人が多い。

国内でも「evian」(=エビアン、硬度300以上)などのミネラル水でお腹をこわす人が多いのはこのためである。また、沖縄に旅行してお腹をこわす人が多いのは、沖縄の水が不衛生なためではなく硬水が多いためである。理由は後述を参照。

 

水の硬度とは?

 

 水の硬度とは、水1Lあたりに溶解したカルシウム(Ca)塩とマグネシム(Mg)塩(それぞれカルシムイオン、マグネシウムイオンと表現することもある)を一定の計算式により算出した和で表したものである。

水の硬度は国によってまちまちで、日本では、戦前、ドイツ式硬度計算法を用いていたようだが、現在は下にしめすようなカルシウム塩・マグネシウム塩の量を炭酸カルシウム (CaCO3) の量に換算するアメリカ硬度を使用している。

硬度(mg/L)=Ca(mg/L)×2.497 + Mg(mg/L)×4.118

 

  硬度による水の分類 (WHOとの比較)
水の種類 日 本  WHO(世界保健機構
軟 水 0~100mg/L未満 0~60mg/L未満      
中硬水 100mg以上~300mg未満  60mg以上120mg/L未満
硬 水 300mg/L以上 120mg以上180mg/L未満
非常な硬水       ーー 180mg/L以上

 

軟水の特徴は?

 

 軟水は、口あたりもまろやかで、際立った特徴がない。出汁をとるにも、美味しいご飯を炊くにも適しており、料理に向いている。ご飯を炊く前に20以上浸漬し、たっぷりの水分を含ませて炊くのはこのためである。

一般的に美容に適しているのも軟水である。軟水は老廃物の排出をスムースにし、皮膚の角質を柔らかく、しなやかにする効果も持つ。洗剤の泡立ちもよく、洗濯にも適している。

通常、水を飲む場合は、ぬるめの水(美味しくないが・・・)をひと口ずつ飲むのが吸収されやすい。軽い便秘の場合は、冷たい水を多めに一気飲みがよい。腸の蠕(ぜん)動運動を活発にする整腸効果があり便秘の解消につながる。

 

硬水の特技は?

 

 硬水は水質による明確なクセがあり、好みに合った硬水が美味しく感じるのは、それによるハッキリとしたクセが味わいを出しているためである。スポーツマンのミネラル補給と特徴のあるサッパリ感が好評を得ている。

洗剤の泡立ちは悪く、特にアルカリ性の場合は、凝固・固着して濯ぎが大変になる。ただ、最近は中性洗剤が多くなりその心配も減ってきた。

硬水は体への吸収が良いとは言えず胃腸への負担も大きく、ダイエットしたい人には向いている。特に炭酸水を含んだミネラル水はよい。

種類も多く、フランスの「エパー」(硬度:1849mg/L)、スイスの「クールマイヨール」(同:1612mg/L)、ドイツの「エンジンガ-・スポルト」(同:1828mg/L)などの超ミネラルダイエット水がある。その他多数のミネラル水がダイエット用として輸入されている。

 

アルカリイオン水って体にいいの?

 

 アルカリイオン水は弱い硬水と考えればよい。つまり、ミネラル分を含んだ水で、炭酸水と似た効果を持つ。

ヒトの体液はPHが7.4程度の弱いアルカリ性である。しかし、現実には食べ物の関係でどうしても弱酸性になりがちであり、PHが酸性側になると病気になりやすいとされている。

外部に接するヒトの胃は強い酸性に保たれていて、その胃液が殺菌作用をしている。飲み過ぎは禁物で、摂取量の目安は体重の5%以下で、それ以上は危険である。特に、胃の弱い方や胃のない方がこの水を飲むと、胃液が薄まり食中毒を起こす元になるの注意が必要。

 

酸水を飲むと何故いいの?

 

 炭酸水を飲むと、体は血中の炭酸ガスを取り除こうとして酸素を送り込み血流が良くなる。そのため血中の老廃物を早く排出する効果もあり、その活発な整腸運動が美肌のためにも間接的ではあるが寄与する。また、炭酸が乳酸などと結合して体外に排出されるので、疲労回復の効果もある。

炭酸水が良いからと多飲は禁物一般の炭酸飲料には糖分が多く吸収も早い。好きな方に肥満が多いのはこのためである。

余談だが、炭酸泉に入浴して肌がツルツルになるのは、皮膚の角質を溶かす効果によるもので適度な時間であれば美容効果もあるが、複数回や長時間では逆効果になることも知っておこう。

 

硬水を飲むと何故下痢をするの?

 

 上記したように、CaやMgはとても吸収されにくい。特にMgが便秘症の方に処方されるように、長時間腸管内にとどまり水分の吸収を妨げる。そのため、体は早く排泄させようとして体内から水分を腸管に集めて分泌する。これが下痢症状である。

下痢を続けると脱水症状を起こすのはこのためである。

便秘の方は、便秘薬を買わなくても市販のにがり(苦汁)を少々水で薄めて飲めばいい。その方がミネラルの補給にもなる。濃度が濃いと、便秘薬の過剰摂取と同様に酷い下痢になるので要注意!

 

硬水を飲むとダイエットになる?

 

 食事制限によるダイエット中は、ミネラル分不足の補給に効果が期待できる。プラス上記の下痢効果(?)もダイエットだけなら役に立つ。

しかし胃腸の弱い方には不向きである。やはり、ダイエットはスポーツなどによる、消費エネルギーを増やすことで目標を目指した方が筋力も鍛えられ健康的である。

誰でも飲むだけでダイエット」という謳い文句に引っかかってしまうのが、人の性(さが)かも知れないが、王道によるダイエットが健康を損なわない近道である。

 

水素イオン水って効果があるの?

 

 水素イオン水のそもそもの根拠は、ストレスを受けた時に体内に発生し諸悪の根源となる活性酸素を除去するというものである。理屈は判るが、化学の分る方なら誰でもご存知のように、およそペットボトルに入ったものなどは先ず怪しい。

そこで考えられたのがアルミでラミネートした容器などが考案された。しかし、これとてもその性質から非常に短時間(数10分程度)で飲まないと意味がない。あっという間に単なるになる。さらに、すべての水素イオンが活性酸素だけに作用するという保証も全くない。生物の生体系に詳しい医師や看護師などなら容易に見当がつくだろうが、寧ろ余分な水素イオンが体のバランスを崩すこともあり得る。まさに精神的な自己満足感に過ぎない。

効果を期待しない方がよいだろう。

 

硬水を軟水にするには?

 

 ご存知の方も多いが、以下の理屈による。昔の人は硬水を生水で飲んでいたので寿命が短かったという説もあるが、確かに水道が普及する頃からヒトの寿命は飛躍的に延びてきた。知っていれば湯冷ましを飲んでいたかも知れないが、上記のように、味は湯冷ましより生水の方が美味しいのは周知の通りである。
ただ、それより効果が大きいのは、世界NO.1を誇る我が国の国民皆保険制度のお蔭であことを忘れてはならない。