第4回 バナナと美容と健康

バナナと美容と健康、その理由は?

 

 すでにアップしたように、「バナナの叩き売り発祥の地」でもある門司の赤れんがレトロの観光を楽しんだ。

ふとした思いつきから、手元に何も資料はないが、大学で勉強している内容も含めバナナについて薀蓄(うんちく)してみることにする。

本稿は「食べ物のお話」シリーズ入れるべきものだが、内容が化学のものなのでこちらに分類した。化学式を使わず、できる限り平易な文章での表現に努めてはいるが、どうしても詳しい説明が必要な部分はリンクで紹介しているので、興味のある方はそちらを参照されると嬉しい。

  

 美容=体の健康であり、体の老廃物を無くして栄養バランスのよい食品により、体の内部を健康にすることが近道である。化粧品などによる美容は、一次的なもので、美しく保つには当該化粧品を一生使い続ける必要があり、やめた途端に肌が見苦しくなる例は多い。特に老後に化粧をしなくても美しい肌を保つには健康であることが大切である。

 

体の不健康はそのサインが肌に現れやすいものである。もちろん、精神的な健康が優先する。若いときに日焼けや厚化粧で痛めた肌は、ホメオスタシスにより、ある程度は回復するが老後になってその後遺症が出てくる。

 

1.バナナは色で種類分け?

 

これは品種分けではなく、用途分けとして理解・利用するとよい。それぞれの特長を生かした食べ分けを考えた方がよい。

 

① グリーンチップ(青めのもの)

  房元やチップ(先)に青みが残る、店頭に出たばかりのもの。

  不溶性食物繊維(難消化性デンプン)を多く含み、後述の整腸作用を活

  かした利用に適する。

② フルイエロー(黄色いもの)

  全体的に黄色で完熟しており、甘味が増し、バナナらしい香りが楽しめ

  る。脳・体・肌・心の健康維持に寄与する「美容ビタミン3兄弟」  

  (B2、ナイアシン(=B3)、B6)をどの果物よりも多く含んでいる。

  黄色のバナナには抗酸化成分であるポリフェノールやβカロテンを多く

  含み、活性酸素の除去剤として機能する。

  一般に体内に取り込まれた余剰な酸素やストレスは活性酸素を発生さ 

  せ体の錆化(酸化)の原因となる生活習慣病(糖尿病、高脂血症、肝機

  能低  下など)や癌などの重篤疾患肌のシミ・シワなどのエイジン

  グ(の引き金にもなる。これらの疾病を予防する意味で理想的な

  食物である。どんな野菜・果物よりも抗酸化力が強いと言っても過言で

  はなかろう。

③ スター(黄色がより濃くなり、茶色の斑点が現れたもの)

  茶色の斑点はシュガースポットと呼ばれているものである。

  甘味はさらに増し、芳醇な香りを利用したすぐ食べる料理に適する。

  シュガースポットの出た茶色いバナナは、一般の果物としては珍しく,

  細胞膜にとって非常に重要なリン脂質を含んでおり、胃の粘膜を保護し

  胃潰瘍の抑制や免疫力を高める効果も期待できる。このことから、スト

  レスに悩む方は黄色や茶色のバナナの方がいいことになり夜食にも適し

  ている。

➃ ダップル(黄色が茶色になり始め、斑点の色も濃くなったもの)

  バーゲンでも入手できないことがあるが、③を買い置きすると1~2日

  でこの状態になる。

  もはや一刻を争って食べるレベルで柔らかく究極の完熟状態。

  食べ切れないときは、皮を剥いてラッピングし冷凍保存するしかない。

 

2.整腸作用(便秘の解消)があるって本当?

 

 バナナには、水溶性食物繊維不溶性食物繊維がバランスよく含まれている。前者は、便を柔らかく出しやすい状態するとともに、余分な脂質を吸着し、コレステロール値や血糖値を安定させる働きがある。後者は、水分を多く吸収して便の固さを増し、大腸に適度な刺激を与えて便意を促す効果がある。つまり、小腸や大腸の働きを効果的にする。

バナナのフラクトオリゴ糖は、ミネラル分の吸収促進や骨密度の低下防止効果もあり、骨粗鬆症予防にもつながる。

体外異物(有害物、薬など)、体内廃棄物(不消化物、過剰栄養素など)は早く体外に出した方がよい。

ヒトの体はこれらを固形物(糞便)、水溶性液体(尿)として排出する仕組みを持つ。従い、毎日決まった時間に排便する(排便リズム)を持って排便するのが理想的である。

但し、排尿の方はあまり短時間サイクルで排出するのは良畜尿能力の低下につながり、老人化したときに頻尿が習慣化されてしまう。

 

3.バナナってカロリーが高いのでは?

 

 バナナは甘いので、高カロリー食品と思われる方が多いかも知れないが、実はそうではない。バナナの糖質成分は、果糖、ショ糖、ブドウ糖である。

その働きは後述するが、一般食品とカロリーの比較をしてみよう。

 大きいバナナ  180~200g 可食部のカロリー:100~110Kcal
 中位のバナナ  140~150g 可食部のカロリー:70~80Kcal
 小さいバナナ      45~50g 可食部のカロリー:30Kcal 前後
 食パン(6枚切)      40~50g

         60~75Kcal

 ご 飯(1膳)

  160g

         270Kcal

この表から分るように、バナナは決して高カロリー食品ではない。

大きなバナナを2本食べてもご飯より低カロリーである。

[余 談]

 こんにゃく(1枚300g)は20Kcal前後で非常に低カロリーに思える。

しかし、こんにゃくを食べても太ると言われる理由には、味が浸みないので砂糖や他の調味料・調理物を併用して濃い味付けをしてしまうため、実際にはとても大きなカロリーを付加して食べるからである。

主食なら効果もあるだろうが、ビタミン類は全くない。ただ、カルシウム、カリウム、マグネシウムの補給では多少期待できる。不溶性食物繊維だって100gあたり僅か3gしかない。

こんにゃくダイエット法は健康学的には間違った方法であり、主食にすれば効果は出ても、バランスの悪い栄養失調で病気を発症する元凶である。

おやつの代わりにゼリー食品を補助的に食べる方が効果的である。

 

4.夜食にいい理由は?

 

 夜、お腹が空いて困ったとき、下手な夜食は太る元凶になる。夜食は数100Kcal 以下で翌朝の食欲に影響を与えないものが適当とされている。

つまり、寝るので胃に負荷をかけない消化の良いものがいい。

前述のように、ご飯はカロリーが高く、おかゆやお茶漬け1杯でも170~180Kcal、かけうどん1杯なら270~300Kcal、ましてカップラーメン1杯では270~500Kcal もある。

バナナは整腸作用があり、糖質を含む低カロリーであることはすでに述べたが、糖分は血糖値を上げ満腹感を導き出す効果もある。食前に甘いものを食べると、食欲が抑えられるのはこのためである。

 

5.バナナの糖質(果糖・ショ糖・

  ブドウ糖・フラクトオリゴ糖)

  の働きは?

 

 バナナは、「フラクトオリゴ糖」を含むことは先に述べた。フラクトオリゴ糖は、砂糖よりやや弱い甘み成分で、砂糖に比べてカロリーが低く、血糖値も上がりにくいのが特徴のひとつである。

また、他の糖類に比べて比較的消化されにくい構造の糖質の一種で、そのまま腸まで届き、腸内菌(善玉菌)のエサとなって腸内環境を改善する。

そのことから便秘や下痢など腸のトラブルを抑える整腸作用をもたらす。 

 果糖ショ糖はゆっくりと消化し長時間エネルギーを産出するのに対し、ブドウ糖は素早くエネルギーに変化する。

ヒトの脳のエネルギー源はブドウ糖だけである。

早い話、疲れたときに緊急的に欲しいエネルギー源は砂糖である。

何故か? 理由は簡単で、他の食品、例えばデンプンなどは構造が複雑で分解・消化・吸収にとても時間がかかるのに対し、砂糖は二糖類(ブドウ糖と果糖類)で構造がシンプルで消化・吸収が早いからである。

 砂糖は小腸の上皮細胞から分泌される酵素により分解される。ブドウ糖は速やかに腸壁から吸収され、血管を通して全身にいきわたり体や脳のエネルギーとになる。そのうちの約25%が肝臓でグリコーゲンとして蓄えられ、必要なときにブドウ糖に還元される。果糖も約10%はブドウ糖に変えられるが、残りは果糖のまま吸収され最終的にはすべてエネルギーとして使われる。疲れたときに、甘いものが欲しくなるのは、体すなわち脳が欲しているのである。

 

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6.栄養成分はいいの?

 

 日本食品標準成分表2015年版(七訂-文部科学省)から一部抜粋したものを右に挙げたので参照して頂きたい。

(詳しくは Excel 版をページ下に用意してあるので参照。)

 ご覧のように、特別にこれがというものはないが、あらゆる有効成分を総合的に多く含んでいることが特長である。。さらに、ここには挙げていないが、アミノ酸含有量が他の果物に比べて多い。特にヒトの体で合成できず、食品から摂取しなければならない9種類の必須アミノ酸(バリン/ロイシン/イソロイシン/リジン/メチオニン/トリプトファン/フェニルアラニン/トレオニン/ヒスチジン)は、他のどの果物よりも多く含んでいるのは驚きである。

 必須アミノ酸の中でも、冒頭の3種(バリン/ロイシン/イソロイシンは、BCAA(Branched Chain Amino Acid=分岐鎖アミノ酸)と呼ばれ、筋肉のエネルギー源となる唯一のアミノ酸でり非常に大切なものである。

私達の前の世代(70~80年以上前)では、バナナは輸入も殆どなく病気にならなければ食べられない時代であった。現代は手軽に入手できるバランス食品であり、これを利用しない手はない。

 

7.オマケの講義(糖類の消化を理解するために)

 

 

 何故、ブドウ糖が消化が早いかは下の構造式を見れば分るように、構造が簡単なものほど容易に分解・消化・吸収ができることが明白である。


ブドウ糖(グルコース)

 ぶどう、柿、いちじくなどの各種果実のほか、ハチミツなどに多く含まれている単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)の一種である。

ショ糖(スクロース)

 砂糖の主成分で、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖類の一種である。

デンプン

 炭水化物(多糖類)で、多数のαーグルコースが結合によって重合した天然高分子である。絹などもセルロースが多数連結した天然の高分子である。

 

デンプンの中には、性質は異なるアミロースとアミロペクチンの両者が共存している。その構造は、アミロースは直鎖状に多数の分子が繋がった構造でで、分子量は比較的小さい。アミロペクチンは枝分かれの多い分子で分子量は比較的大きい。

出典 文部科学省(七訂 2015年)
日本食品標準栄養成分表(果物).xlsx
Microsoft Excel 93.9 KB

参考文献

文部科学省

 日本食品標準栄養成分表

農林水産省

 栄養成分の計算法

 

その他、自動計算データベース

こちらを利用すると、30種類までの素材を使ったメニューの全栄養素のデータ分析ができます。