さ行のことば
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さ
采配(さいはい)を振(ふ)る
「采配を揮(ふる)う」「采配を振(ふる)う」は誤りというのが現状であ
るが、言葉は生きており、本来の使い方から変わりつつある。
「采配」は戦場で大将が兵士を指揮するのに使う道具である。従い「振
る」が正しい。相撲の「軍配」も采配に由来している。
歳月(さいげつ)は人(ひと)を待(ま)たず
「才月は人を待たず」は誤り。月に才能があるわけではない。また「歳
月」を「期日」の意で使うのも誤りである。
陶潜の『雑詩』(詩の最後の部分)に由来する言葉である。
最高潮(さいこうちょう)
「最好調」は誤り。耳からは「好調」に聞こえるが、その場のシチュエー
ション(situation=状況)から判断して使わなければいけない。
調子が良い場合は、「絶好調」の方を使う。類語。
先(さき)取(どり)する
「先取る」は誤りで、辞書にはない。「先取りする」は正しい言葉。
酒(さけ)を酌(く)み交(かわ)す
「酒を飲み明かす」と混同されやすいが、「酒を飲(のみ)交わす」は誤
り。「酒を酌み交わす」とは、友誼(ゆうぎ)又は友好の証(あかし)
として盃を交わすことをいい、単に「飲み明かす」よりも意味が深い。
興奮覚(さ)め遣(や)らぬ
「覚め止(や)まぬ」は誤り。「醒めやらぬ」という字も使われる。
完全に覚めきっていないこと。「夢――」という表現にも使われる。
三位(さんみ)一体(いったい)
「三身(さんみ)一体」は誤りで間違った当て字。いろんな場面で使われ
るが語源に惑わされることなく、「さんい」ではなく「さんみ」と読む
のが正しいので注意が必要。
し
時期尚早(じきしょうそう)
「時機早々(そうそう)、時期早々、時機早尚(そうしょう)、時期早
尚」は、とても紛らわしいがいずれも誤り。
試行錯誤(しこうさくご)
「思考錯誤」は誤り。英語では、trial and errorという。類語。
事実(じじつ)を歪曲(わいきょく)する
「事実を湾曲(わんきょく)する」は誤り。「歪曲」とは、ことさら事実
を偽って伝えること、「湾曲」とは、弓形に曲がること。
至上命令(しじょうめいれい)
「至上命題(めいだい)」は誤り。「至上(しじょう)」とは、この上も
ないこと、「命題」とは、題をつけることなので意味が全く異なる。
時節柄(じせつがら)
「季節柄」は誤り。時節にふさわしいことを意味し、文例集に見られるよ
うにこのような時節だから…という意味が含まれる。時分柄。
「――御自愛ください」のように使う。文例集
舌先三寸(したさきさんずん)
「口先(くちさき)三寸」は誤り。口先だけの巧みな弁舌をいう。ここに
掲げた言葉以外にも「舌」を使った言葉には非常に間違いやすいものが
沢山あるので、調べてみると面白い。
舌鼓(したつづみ)
「舌づつみ」と読んだり、「舌包(づつ)み」と書くのは誤り。
舌(した)の根(ね)も乾(かわ)かぬうちに
「舌の先(さき)も乾かぬうちに」は誤り。
地団駄(じだんだ) または 地団太を踏(ふ)む
「じたんだを踏む」は誤り。腹を立てたり悔しがったりして、激しく地を
踏むこと。
失血死(しっけつし)
「出血死」は誤り。出血量に関係なく、死んでしまえば「出血死」と言え
なくはないが、正しい言葉の使い方は「失血死」。但し、医療現場で使
う言葉ではない。
実物大(じつぶつだい)
「実寸大」は誤り。実物と同じ大きさであることを意味する。
「原寸大(げんすんだい)」との混同されやすいが、こちらは正しい言葉
である。どれもニュアンスでは大体判るので紛らわしい。
社交辞令(しゃこうじれい)
「社交辞礼」は誤り。本気ではないが形式的に言うべき言葉だから「礼」
儀だろうと思って「辞礼」を使う人が多いが間違い。
くれぐれも「社交辞令」には気を付けることが大切。
斜(しゃ)に構(かま)える
「斜(ななめ)に構える」は誤り。意味的には、ものごとを疑って冷やや
かな目でみる態度のことをいう。
食指(しょくし)が動(うご)く
「触手(しょくしゅ)が動く」「食指(しょくし)をそそる」などは誤り。
野心を抱(いだ)いて徐々にに行動に移すことを「触手を伸ばす」とい
う。「食欲」の場合は、「そそる」という表現も使われる。
職人気質(しょくにんかたぎ)
「職人気質(しょくにんきしつ」は誤り。若い方に読み間違いが多く、そ
の意味も「かたぎ」と「きしつ」の違いが区別ができないらしい。
その職業にある人々がもつ独特の気風を指し、単なる一般的な性質(気
質:きしつ)と区別していう。ちなみに「堅気:かたぎ」とは全く別の
意味になる。
射程内(しゃていない)に入(い)る
「射程距離に入る」は誤り。「射程距離」は二重表現になる。
同様に「従来から」の「から」は不要で、二重表現になってしまう。
「馬から落馬」「頭痛が痛い」「朝の朝食」のような二重表現(重言)は
間違いではないという説もあるが、好ましい(適切な)表現ではない。
シミュレーション(simulation)
「シュミレーション」、「シミレーション」はいずれも誤り。
初心(しょしん)忘(わす)るべからず
「初心忘るるべからず」は誤り。世阿弥の「花鏡(かきょう)」にある
言葉で、学び始めた当時の気持を忘れてはならないという意味。助動詞
「べし」は動詞およびそれと同じ活用型の助動詞の終止形に接続する。
厳密には、「ここに小便するべからず」の例では誤りだが、現代は名詞
に「する」をつけて動詞扱いになっており、日本語は難しい。
知(し)らぬが仏(ほとけ)
「言わぬが仏ほとけ」は誤り。 単なる造語で、辞書にはない。
「言わぬが花(はな)」と混同されやすい。
素人(しろうと)離(ばな)れ
「素人しろうと)跣(はだし)」は誤り。専門家でないのにまるで専門家
のようにすぐれていることをいう。「玄人(くろうと)跣(はだし)/
玄人裸足」と混同されやすい。「玄人はだし」の方は、「玄人も裸足で
逃げる」ほど優れているという意味。
人間(じんかん)到(いた)る処(ところ)青山(せいざん)あり
「人生いたるところ青山あり」は誤り。故郷を出て大いに活躍すべきであ
るという意味を表す。「人間(じんかん)」は世の中のこと、「青山」
とは墓場のこと。江戸時代末期の僧「釋月性」が「將東遊題壁」に詠っ
ったもの。
心機一転(しんきいってん)
うっかり「心気一転」と書いてしまいやすいが誤り。「機」はチャンス
を表す言葉だから「座右の銘」にしてもいかも?
す
凄(さま)じい
「すざましい」は誤り。類語、言い換える言葉は多い。
頭陀袋(ずだぶくろ)
よく使われている「ずた袋」は誤り。僧が修行の旅をするとき、経文や
食器などを入れて首にかける袋。仏式で死者を葬るとき、その首にかけ
る袋。一般的にはいろいろな物が入るような、だぶだぶした袋の総称。
語源由来辞典参照。
済(す)みません
「すいません」は誤りで、正しくは「すみません」。「すまない、申し訳
ない」という気持ちを表す。「すみません」が口語化・定着したもので
全くの間違いとは言えないが、目上の人に対して「すいません」は失礼
で正しい言葉を使うべきである。
寸暇(すんか)を惜(お)しんで
「寸暇を惜しまず」は誤り。僅かな時間を大切にという意味を表すが、
「骨身(ほねみ)を惜しまず働く」などと混同されやすいことばである。
酸(す)いも甘(あま)いもかみ分(わ)ける
「酸いも辛(から)いもかみ分ける」は誤り。ものごとの道理を知ること
を意味し、人生をよく知った熟年者を表現するのによく使われる。
せ
成功裏(せいこうり)に
「成功裏のうちに」は誤り。二重表現になっている。「成功裡(り)」と
書く場合もあるが、それは「裏」という字が「うら」という意味ではな
く「裡(り、うち)」の意味(――のうちに)で使われていることを示
している。
精根(せいこん)尽(つ)きる
「精魂尽きる」は誤り。確かに魂も疲れるだろうが、「精根」は物事をす
る精力と根気のことを指す。
急(せ)いては事(こと)を仕損(しそん)ずる
「強しいては事を仕損ずる」は誤り。「急がば回れ」の同義語として使わ
れる。何事も無理強(じ)いはよくない。失敗するからやめよう!
脊椎(せきつい)動物
「脊髄(せきずい)動物」は誤り。「脊椎」とは、「椎骨(ついこつ)」
のことで、脊椎動物の脊柱(背骨)を形成する骨のこと。「脊髄」とは、
脊柱管内、つまり背骨の中にある中枢神経のこと。
責任(せきにん)を追及(ついきゅう)する
「責任を追求する」は、似た言葉であるが一般的には誤り。「追求する」
意味で使われることもある。使い方の参考。
責任(せきにん)転嫁(てんか)
「責任転換(てんかん)」は誤り。語源由来辞典にあるように、自分が負
うべき責任を罪のない他人になすりつけること。
「責任転換」は辞書にもないが、理論上できないことで替え玉をしてもい
ずれはバレてしまうだろう。
世知(せち)辛(がら)い
「せちがない」は誤り。生活していきにくい、世相的にこせこせしていて
暮らしにくいという意味で使われる。
雪辱(せつじょく)戦(せん)
「屈辱(くつじょく)戦」は誤り。「雪辱」と「屈辱」は、一見似ていて
紛らわしいが、「雪辱を果たす」と言っても「屈辱を果たす」とは言わ
ない。
絶体絶命(ぜったいぜつめい)
「絶対絶命」は誤り。試験問題によく出る言葉。文字を手で書かなくなっ
た若い人に多い間違い。「体が死んだら命もない」と覚えておこう!
切羽(せっぱ)詰(つ)まる
「切端(せっぱ)詰まる」は文字から見るといかにも正しそうだが誤り。
これも若い人に多い間違いで試験問題によく出る言葉。意味は語源由来
辞典を参照。
先見(せんけん)の明(めい)
「先見の目(め)」は誤り。「先見のみょう」も誤読。後漢書(54巻)に
登場する楊彪(ようひょう)伝に由来する言葉で、将来どうなるかを前
もって見抜く見識のことをいう。
善後策(ぜんごさく)
「前後策」は誤り。国語に弱い人の典型的な誤りに多いが、非常によく使
われることばで、「善後策を講じる」のように使う。
前門(ぜんもん)の虎(とら)、後門(こうもん)の狼(おおかみ)
「前門の狼、後門の虎」は誤り。よく使われるが、一つの災難から逃れた
と思ったら、別の災難に遭うこと。一難去ってまた一難のたとえに使わ
れる。類語にあるように言い換える言葉は沢山あるので、自信がない場
合は他の言葉で表現しよう。
中国(元代)の学者趙弼の「評史」にある「前門に虎を拒(ふせ)ぎ、
後門に狼を進む」に由来する言葉。
そ
双璧(そうへき)
「双壁(そうへき)」は誤り。かべ(壁)ではなく、「璧(たま)」に注
意。「源氏物語」(長編物語)の紫式部と「枕の草子」(随筆)の清少
納言は「平安文学の双璧」と言われている。言語由来辞典に示すように
中国の「北史」に由来する言葉である。
疎遠(そえん)になる
「疎縁」はうっかりミスが多く誤り。類語は多い。「縁遠くなる」と同義
であるが、「疎遠」の方が意味的には広い。
袖(そで)振(ふ)り合(あ)うも他生(たしょう)の縁(えん)
「袖振り合うも多少の縁」は誤り。聴く音感から殆どの人がこの誤字の意
味で解釈されているが、これは諺から(言葉の取り違えにより)生まれ
た誤字のことばである。また、「袖触れ合う・・・」と書くのも誤り。
「・・・他生の縁」とも書くが、これは正しい。「多生」とは、仏(教)
語で何度も生まれ変わることを意味する。
「誤字等の館」の解説も大変参考になるが、すべて覚えようとしないで、
正しいものを確実にひとつ使えるようになることである。。