旅のこぼれ話(14C1)

    何事にも段取りというものがあるものだ。
    何事にも段取りというものがあるものだ。

 こっちにゃ~

 こっちの都合が

   あるんだよ!

 

 金刀比羅宮の参道の入口にホテルをとると、従業員の殆どが私達以上の年代であった。一番上は大女将と思われる90歳位の女性をはじめとして、仲居さんも、布団係の男性も70~80歳を超えている。

何処の宿でも布団係を待つことなく勝手に布団を敷いたり、片付けたりしてしまう私達、この日も部屋食が終わると勝手に敷いて寛いでいた。

布団係のお爺ちゃんの出番が来た。襖を開けるなりあっけにとられてポカンとした。「お布団はいいですよ!自分達で敷きますので・・・」と紫陽花が言うと、半ばふて腐れたように「こっちにゃ~、こっちの都合があるんだよ!」と。決して怒ったり悪気があってではないと思われるものの、その言葉に今度はお客のこちらがあっけにとられた。びっくりしていると、応接台の上にあるお茶セットやポット、宿の案内書などを忙しく移動し始めた。夕食では一人に2つずつコンロが付いたのでお膳が物凄く大きく、応接台も2つ使って辛うじて4人分の食事が何とか出せたほどある。応接台の上を片付けると、慌ただしく押入れを開けた。押入れは3段構成になっていて、最下段がマットレス、中段が敷き布団と掛け布団、最上段は枕やシーツが収納されている。なるほど……、確かに宿には宿の都合(マニュアル)があるようだ。マットレスを2枚を出さないと応接台が一つ収納できない。その隣でも同じ作業をしてやっと2つの応接台が片付き部屋が広く使えるという段取りである

 それなのに私達がマットレスは要らないからと勝手に布団を敷いていたため、お爺さんにとっては段取りが大きく狂ってしまったらしい。

下のマットレスを中段に移動しないと応接台が収納できない。翌日は逆のことをしないと布団が片付けられないわけだ。

旅行中も、帰宅してからも、「こっちにゃ~、こっちの都合が…」が流行り言葉になってしまい、便利に使っている。毎年末にその年の流行語大賞が決まるが、我が家の今年の流行語大賞はこれで決まり!

 

 

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